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院長コラム

Vol.27 地方の医師不足への処方箋

 最上地域の人口あたりの医師数は、全国平均の62%と深刻な状態です。地方の大学では、将来僻地で働く医師を確保する目的で医学部の定員を増やすところがあります。また、10以上の県で卒業後一定期間(貸与年数の1〜2倍)僻地で仕事をすることを条件に、医学生に奨学金(月額10〜20万円)を出していますが、多くは定員割れの状態です。そもそも入学から8年後の進路をコントロールすることは難しく、また将来医師として働くことをイメージできない日本の若者にとって、不確実な将来を託す奨学金制度は魅力的ではないのでしょう。

 2004年度から、国家試験合格後初めの2年間は臨床研修を受けることが義務化されました。その結果、研修病院と呼ばれる一般病院への流れが促進され、大学の医局に入る新卒医師の割合が、8割から半数以下に減ってしまいました。そのため、医局に若手が不足し、地方の病院から医師を大学へ連れ戻す現象が起こり、地方の医師不足に拍車がかかりました。そのため、この制度が諸悪の根元と考えている人たちも少なくありません。

 しかし私はこの制度の中にこそ医師不足を改善させる処方箋があると思います。私たちの病院には、都会から2ヶ月交替で卒後2年目の医師たちが研修に来ています。私たちのグループでは、2ヶ月間の僻地研修が義務づけられているのです。若手医師が、指導医の少ない地方病院で研修することには賛否両論ありますが、ほとんどの研修医がよい勉強になったと感じ、中には将来僻地で働くのもいいなと思う者もいます。この制度を国全体で必修化してしまうと、年間約8千人の若者が僻地医療を経験することになります。そして、独り立ちしてからもう少し長い期間赴任することまで義務づけると、地方の医師不足はかなり解消するはずです。ほぼ全ての医師が関わることで問題を解決しようという発想です。医師1人を養成するのに少なくとも1千万円以上の税金が必要であるという事実は、国民の多くが普通の医療を平等に受けられるという形で還元すべきだと思います。

 このような意見は、医療界ではほとんど支持されません。「強制」は、戦後悪者扱いされてきましたが、強制であっても貴重な経験ができる事実を私は目の当たりにしました。むしろ、強制の中にこそ若者に希望を与えるものがあるのではとさえ感じています。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日 第587号 平成19年12月15日 掲載

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