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院長コラム

Vol.31 個食をなくすには貧しくなるしかない?

 家族が揃わず子供や大人が1人で食事をする個食が増えていると言われています。平成17年度「児童生徒の食生活等実態調査」によると、「1人で食べる」子供は、朝食で、小学生14.8%、中学生33.8%、夕食で、小学生2.2%、中学生6.9%、逆に「家族揃って食べる」子供は、朝食で、小学生 25.2%、中学生17.8%、夕食で、小学生56.5%、中学生54.8%です。個食が増えた原因は、父親の残業や子供の塾通いもあるのでしょうが、その根底には、いつでも簡単に食べものを手に入れることができる日本の豊かさがあるのです。

 アフリカの事情に詳しい作家の會野綾子さんによると、多くの地域で食事は必ず家族一緒にするものですが、そこには食物を取り分ける習慣もお皿もなく、家族が大きなお盆を取り囲んでいっせいに手を伸ばして指で丸めるようにして口に運ぶそうです。そのようなやり方では当然強い者がたくさん食べるので、弱いものつまり子供は栄養失調になりやすいのです。皮肉なことに、取り分ける習慣がなく、作る量も同じなので、食べる人数には無頓着です。そのため、親戚の子供を引き取ることに抵抗がなく、アフリカでは孤児が発生しにくいという側面もあるそうです。

 會野さんは、子供にとって食事の場は、食べるだけでなく、しつけを受け、世の中の掟を盾に叱られたり褒められたりし、大人の会話を聞いて、成人社会を知る場であると述べています。同感です。時には、学校や先生と親の考えが異なり、その際に家庭が優先することも教えなければなりません。したがって、家族が揃っていても、みんながテレビを見ているのでは、広い意味では個食になります。また、全く会話もせず黙々と食べているのも同じです。

 私は、仕事の関係で家族一緒に食事をすることが難しいので、毎朝6時に全員揃って朝食を取ることにしています。1年前からは、しっかりしたボリュームと栄養のバランスを心がけて、自分で朝食を作るようになりました。

 個食をなくす最も簡単な方法は、日本社会が昔のように貧しくなることです。それが嫌なら、親が民主主義を捨て、愛情と強い信念を持って、家庭内の決まり事を作り実行するしかありません。テレビを消して会話するということはその最低条件です。子供を変えたければ、親自身が変わらなければなりません。結局親の力量が試されているのです。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日 第599号 平成20年6月15日 掲載

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