7月になり山形市のスーパーでレジ袋が有料化(1枚2〜5円)されたそうです。レジ袋1枚で62グラムの温暖化ガスが削減できるとか、山形市だけでレジ袋のために年間25メートルプール3個分の石油が消費されているとか、まことしやかに言われていますが本当でしょうか。
武田邦彦著「偽善エコロジー」(幻冬舎新書)を読むと、どうもこれはかなり怪しい気分になります。そもそもレジ袋は、石油を生成する過程で生じた燃えやすいオレフィン成分というものを原料としています。昔は廃棄物として燃やされていたのですが、技術者の創意工夫によって、レジ袋やビールケースや自動車のバンパーに有効活用されるようになったのです。価値がなかったものから作ったので無料だったのです。レジ袋はそれなりの強度はありますが繰り返しの使用には不向きで、燃えやすい成分なのでゴミを入れて燃やすには最適だったのです。
一方、盛んに宣伝されているエコバッグの材料は、多くの場合BTX成分という石油の中では少なく貴重なものです。これを時々買い換えると、レジ袋より損失が大きくなるかもしれません。また、多くの自治体で売られている専用のゴミ袋は、レジ袋と同じ成分からできています。有料なのでゴミの減量には多少貢献するかもしれませんが、わざわざ無料のものをやめて、似たものをお金を出して買わされているのです。当たり前の話ですが、レジ袋をなくすときには、それにより増えるエコバッグと専用ゴミ袋の量を比較しないと意味がないのです。無料で配られるレジ袋がなくなり、エコバッグや専用ゴミ袋が売れると、企業は儲かり、お役所は仕事を確保できます。その上「環境に配慮した」というイメージアップまで期待できます。
さらに、百歩譲ってレジ袋の有料化で石油の消費量が半分に減った(年間25万トンから12.5万トン)としても、全体のエネルギー量(年間5億4千万トン)から見るとわずか0.023%の削減しか期待できません。
この本を読むと、温暖化は深刻な問題なのか、リサイクルやゴミの細かい分別は意味があるのか、割り箸は森林を破壊するのか、バイオエタノールは環境によいのか、などなど次々と疑問がわいてきます。結局、環境問題は政治問題であり経済問題であるというのが私の感想です。
院長 笹壁弘嗣
新庄朝日 第601号 平成20年7月15日 掲載
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