我が国では1962年に全ての学童と生徒を対象にしたインフルエンザワクチンの集団接種が始まりましたが、効果に疑問が持たれ副作用の問題もあり、 1980年代後半から急速に接種が減り、1994年から任意接種になりました。そのため大手製薬会社が製造しなくなり、現在では4つの研究所でしか作られていません。また、鶏の卵を使う我が国の製法では、1人分を作るのに2個の有精卵が必要で、製造に6ヶ月かかります。つまり少ない施設で、手間暇をかけないと作れないので、国産ワクチンは不足するのです。
一方、欧米のワクチンは遺伝子工学を応用し2ヶ月で製造できます。輸入ワクチンの安全性が話題になっていますが、これはワクチンに含まれるアジュバントと呼ばれる成分に問題があるからです。アジュバントにより抗体ができやすく持続も長くなるというメリットがありますが、もともとは副作用が強く人体には用いられていなかったものを改良したので、不安視されているのです。
英国は全国民に、米国は半分に接種する方針です。我が国も半数を想定しているので、国産ワクチンだけでは3分の1程度しかまかなえません。欧州連合では臨床試験抜きで使用できるようにしたため、接種が2ヶ月早まりました。また、我が国を始め多くの国が副作用が起きても製薬会社に免責を与える決定をしています。このようにして早期に多くの人がワクチンを受けやすくなるわけですが、それが吉と出るか凶と出るかは全く分かりません。
1976年に米国でインフルエンザワクチンを4000万人に接種したところ、約50万人がギラン・バレー症候群という難病になり、数十人が死亡しました。この政策を強力に推進したのは、医療とは無関係で、製薬会社と関係が深い国防長官でした。今回のワクチン市場は数兆円規模になるでしょう。とすると、医学的見地以外に、政治経済的な要因も絡んでくると考えなければなりません。実際、ワクチン接種を強く勧める結論を出した世界保健機構(WHO)の専門家会議には欧米の大手製薬会社の代表が出席していますが、その議事録の開示をWHOは拒否しています。
ちなみに、米国の医師に対するアンケート調査では、新型インフルエンザワクチンを受けたくないという回答が60%に達しています。いったい、私たちはどのように考え、どのように行動すべきなのでしょうか。続きは次回に。
院長 笹壁弘嗣
新庄朝日 第631号 平成21年10月15日 掲載
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