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院長コラム

Vol.41 どうするインフルエンザワクチン

 季節性のインフルエンザワクチン(以下「季節性」)に続いて、新型インフルエンザワクチン(以下「新型」)の接種も始まりました。「季節性」は従来のインフルエンザにしか、「新型」は新型インフルエンザにしか、効果はないようです。(これには異論もあります)。したがって、予防効果を最大にするためには両方の接種(小児は2回)が望ましいのです。

 ところが、「季節性」は「新型」の影響で例年の8割程度しか生産できなかったため、早くなくなることが予想されます。一方「新型」は優先順位がつけられ、前回お話ししたように、一般の方に国産品が廻ってくる可能性は少ないようです。このように限られた医療資源はどのように分配すればよいのでしょう。

 個人を守るためには、重症化を予防するために妊婦や小児や基礎疾患のあるものを優先しなければなりません。一方、集団が免疫を獲得することを重視するのであれば、若年者優先になります。この両者を満たすには今回のワクチン数は絶対的に不足しています。十分な医療資源がない場合は、選別が必要になります。選別とは、誤解恐れず言えば、誰を見捨てるかを決めるということです。どのような選別方法も全ての人の納得は得られないので、必ず何らかの批判を受けるでしょう。本来これは政治の仕事ですが、次の選挙の票を減らす危険性があるので、実際そういう発言をする政治家はいません。でも、そのような政治家を選んだのは私たちです。

 新型の特徴は若年者に感染しやすいということで、特に最近では90%が19歳以下です。季節性では重症化するのが高齢者に多いのに対して、新型では1〜14歳が75%を占めています。新型と言っても、実は成人は何らかの免疫を既に持っている可能性が高いのです。

 私の「新型」に対する考えは以下の通りです。できるだけ多くの人が受けられるようにとりあえず全て1回打ちにします。小児は基礎疾患があるなしにかかわらず最優先にして、学校などで希望者に対して集団接種します。そうすると、患者がたくさんいる(感染する可能性が高い)医療機関にワクチンを受けに行くというリスクも回避できます。妊婦と医療従事者も最優先にし、医療従事者は、職場にかかわらず患者さんに接する確率が高いものを優先します。そして、救急隊員・自衛官・警察官などの社会秩序を守る人たちも最優先すべきだと思います。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日 第633号 平成21年11月15日 掲載

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