茶色と白色の卵が、大きさも値段も同じなら茶色を買いませんか。白の鶏は白い卵を、茶色の鶏は茶色の卵を産みます。日本で最も多いのは、卵をたくさん産む白色レグホンで、そのため白い卵が多いのです。茶色の羽の鶏でも、窓のない鶏舎で育てると卵の殻の色はより濃くなります。また、餌によっても変わります。味と殻の色は全く関係ありませんが、スーパーに茶色の卵があると、色の濃いものから順に売れるそうです。
また、黄色の色は濃いほど味が濃いように感じませんか。卵の黄身を牛丼などにかけるときには、意図的に色を濃くするために、餌に野菜のパプリカの粉末を混ぜるのです。美味しい卵の黄身はむしろうすいレモンイエローのことが多いようです。
卵の味に一番影響するのは餌です。私たちが口にする卵は、ほとんどが輸入トウモロコシを与えられた鶏が生んだものです。よい飼料を使うと卵の味はよくなりますが、値段も上がります。卵は「物価の優等生」などと呼ばれ、昭和30年代からほとんど値段が変わっていません。そのために徹底的に効率ー大規模経営・設備の整った鶏舎・産卵率の高い品種・栄養価の高い飼料などーが追求されてきました。鳥インフルエンザで10万羽単位の鶏が処理されることからも如何に大規模で養鶏が行われているかがわかります。このようなやり方をやめて、地面で鶏を飼い、国産の飼料を使うと、卵の値段は1個50円くらいになります。また、このような飼育では伝染病は広がりやすくなるので、安全性には問題が残ります。
青森県で休耕田で栽培した米を餌にした養鶏を行っている農場があります。蛋白質を多く含む米を食べた鶏からはとても美味しい卵がとれるそうですが、1個100円します。これを単に高いを考えるか、国産の飼料を使うことでお金を国内に流通させることができ、生産者が潤い、田畑が荒れることが減り、食糧難になっても飼料用の米を人も食べられる点などを、大きな利益と考えられるかが問題です。青森県の休耕田で飼料用の米を作ると、県内の飼料は全てまかなえます。当然大量に作るとコストも下がります。
以上のことは山本謙治著「日本の食は安すぎる」に書かれていることですが、安い食料品を大量に輸入して、膨大な量を破棄している我が国は、本当に豊かなのでしょうか。少なくとも、安くて美味しくて安全な食べ物はないということは肝に銘じておいた方がよいでしょう。
院長 笹壁弘嗣
新庄朝日 第641号 平成22年3月15日(月) 掲載
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