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院長コラム

Vol.67 お茶でうがいをすると風邪を引かない?

 風邪やインフルエンザの予防には、何といっても手洗いが重要で、「衛生的手洗い」が推奨されています。方法は、普通の石鹸(薬用や抗菌薬入りは不要)をよく泡立てて流水を使って洗い流すというものです。衛生的手洗いは30秒以上かけるのが基本ですが、医療現場でも10秒程度しかやらないのが現状です。私は一日に数十回は手を洗いますが、衛生的手洗いをきちんとすることは明らかな汚染があった時だけで、通常は簡単な手洗いに、アルコールを含む速乾性手指消毒剤を刷り込む方法を組み合わせています。

 マスクを風邪の予防に使うのは、日本など一部のアジア諸国の習慣です。ウイルスは非常に小さな粒子で、マスクの不繊布でブロックすることは困難なため、感染した人が他人に伝染さない効果はあまり期待できません。風邪をひいたら休むのが一番ということです。一方、感染する前に自分の身を守る効果は期待できそうです。実際、家族間のインフルエンザ感染が、マスクと手洗いである程度は予防できるという研究があります。私は、長時間の新幹線での移動時には、保湿効果も期待してマスクを付けることにしています。

 さて、うがいはどうでしょうか。うがいは我が国独自の衛生習慣です。384人を「水うがい群」「ヨード液うがい群」「特にうがいをしない群」の3つに分け2ヶ月間追跡調査したところ、水でうがいをする人はうがいをしない人に比べて風邪を引く割合が4割も低くなりました。一方ヨード液うがい群は12%の低下にとどまりました。イソジンうがい液などの効果はないと考えてよいでしょう。 消毒薬は傷の治る過程を障害するので、最近はケガの処置にあまり使われなくなりましたが、喉の感染防御機構も障害するのかもしれません。

 お茶のうがいを推奨して、うがい用にお茶を持参させる学校があります。確かに茶カテキンには抗菌作用も抗ウイルス作用も認められています。その効果を調べる研究がいろいろなされていますが、今のところ明確な結論は出ていません。うがいは鼻腔への効果は期待できず、どれくらいの量でどれくらいの間隔で行えばよいかなど不明な点も多くあります。私はお茶が大好きですが、お茶でうがいをする気になれません。理由は、「もったいない」からです。水でうがいをして、お茶をたくさん飲めばいいと考えています。少なくとも、うがいのために子供にお茶を持参させるというのは理解できません。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日 第683号 平成23年12月15日(木) 掲載

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