脱法ハーブが危険ドラッグに名前を変えたようですが、安全なドラッグ(薬物)はあるのでしょうか。漢方薬を含めて副作用のない薬はありません。熱・下痢・蕁麻疹・肝機能障害など多彩です。医者は病気を見ると必ず薬の副作用を疑います。
高齢者は、腎臓や肝臓の働きが低下していることが多いので副作用が出やすいのですが、忘れてならないのは他の薬との相性です。相互作用は薬の種類が増えるほど起こりやすいので、持病が多い高齢者は要注意なのです。
過剰な薬を処方することを多剤投与またはポリファーマシーと呼びます。医療費増加の一因なので、厚労省も抑制するように診療報酬の改定(1回の受診で7種類以上のクスリを出すと1割減額)を行いましたが効果はないようです。厚労省の最新の統計では、処方される薬の種類が7種類を超える頻度は、75歳以上の高齢者では約25%です。ある病院の調査では、9つの診療科から24種類の内服薬が処方され、1日に48錠の薬を飲む患者もいたそうです。
ポリファーマシーの背景にある最大の問題は、「金儲け」や「習慣的な無駄な処方」ではなく、医学の進歩によって薬が増え過ぎたことです。これだけ多くの薬があると、効果や副作用をきちんと把握することは不可能です。したがって、医療者や患者は以下のことを注意すべきです。
診療ガイドラインが整備されてきたため、医者の好みで薬が選ばれることは少なくなりましたが、画一的な処方がなされる傾向が強くなりました。当然病気が増えれば増えるほど、薬は増えてしまいます。大事なことは、目の前の患者にとっての優先順位を考えることです。医者は、足し算ではなく引き算で薬を考える習慣をつけなければなりません。例えば骨折を予防するための骨粗鬆症の薬は、寝たきりの患者さんには優先順位が低いということです。ところがこのような発想は、複数の医者が関係する場合は生まれにくくなります。
他の診療所や病院を受診するときには必ず今服用している薬を提示しましょう。「お薬手帳」があれば一番確実です。「赤い錠剤」と言われても、医者には通じません。
薬がこれからも必要なのかは分かりません。血圧の薬は飲み始めたら一生やめられないというのは間違いです。血糖やコレステロールを下げる薬は、生活習慣を改善させれば減らすことが可能です。胃薬も漫然と続ける必要性がないこともあります。もちろん自己判断で減らすことは危険ですが、むやみに薬を欲しがるより、一度主治医と薬を減らす相談してみてはどうでしょう。クスリはリスク(危険)なのです。
院長 笹壁弘嗣
新庄朝日 第747号 平成26年8月15日(金) 掲載
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