学校や職場からインフルエンザの検査を受けるように言われて受診する患者さんが少なくありません。未だに誤解があるようですが、検査結果が陽性ならほとんどの場合は感染していると言えますが、陰性なら感染していないとは言えないのです。インフルエンザウィルスの存在は短時間で確認できるようになりましたが、症状が出てから半日以内では感染している人でも半分くらいしか陽性になりません。急な発熱・倦怠感・関節痛などが流行時期に見られたら、それだけでインフルエンザと考え、学校や職場は休むべきです。症状が軽いのであれば自宅で安静にしているほうがよく、たくさんの病原体がいる病院に来るメリットはほとんどありません。
インフルエンザになったらタミフルなどの抗インフルエンザ薬を使うことが多いのですが、検査が陰性でも、状況証拠から強く疑われる場合は使用したほうがよいこともあります。この薬は感染初期に用いることが重要なので、検査が陽性になるまで待っていると効果が弱まるのです。もっともその効果も、発熱期間を1日短縮するくらいです。吐き気や嘔吐などの副作用は10%に見られます。若者の自殺につながる異常行動との関連は今のところ結論が出ていませんが、抗インフルエンザ薬を使用しないという選択肢も有力です。私の子供が先月高熱を出した時は、インフルエンザの可能性が非常に高いと判断し、検査もせず、抗インフルエンザ薬も使用せず、1週間で治りました。
通常のインフルエンザは第二種の学校感染症に指定され、学校保健安全法によって出席停止期間が決められています。感染の危険性が高いときは登校を禁止するのは当然ですが、その判断はインフルエンザ検査の結果で下すのではなく総合的に行います。登校してもよいことを医療機関に委ねて治癒証明書を提出させる地域もあるようですが、感染の危険がないことを保証できる医者はいないと思います。そもそも不顕性感染といって全く症状はないけれどもウィルスを持っている状態もあるのです。
インフルエンザの検査で感染の動向を知ることは、抵抗力の低下した高齢者や病人の集団感染を予防するのに役に立てることが主な目的です。元気な若者は、「検査!、検査!」と騒ぎ立てず、学校や職場の方々も、検査を黄門様の印籠とは考えないでください。どのようにしてよいかわからない事態に直面した時に、考えも悩みもせずに第三者に答えだけを求めるのは成熟した大人の取る態度ではありません。答えのない問題のほうが実社会では多いのです。
院長 笹壁弘嗣
新庄朝日 第757号 平成27年1月15日(木) 掲載
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