インフルエンザが流行しています。例年より気温が低いことに加え、ワクチンが不足したことも影響しているかもしれません。厚生労働省の推計では、毎年国内で罹患するのは約1,000万人、関連死は約1万人とされ、死亡率は0.1%程度です。生命に関わる頻度が高いのは、慢性的に心臓や肺や腎臓が悪い人、コントロール不良の糖尿病患者、高齢者や乳幼児、免疫の低下している人などで、健康人はインフルエンザを広める役割を果たしていると言えます。
インフルエンザは他の風邪と異なり、検査でウィルスが容易に確認できるので、体調が悪いと検査を受け、陽性なら薬をもらわなければならないと考えている人が多いのですが、感染していても無症状のこともあれば、検査が陰性のこともあります。検査を受ける価値が高いのは、治療の必要性の高い人と、集団発生が惨事につながる病院や施設の関係者です。健康人に対する抗インフルエンザ薬の効果は、感染初期に用いると発熱期間を1日短縮する程度で、吐き気や嘔吐などの副作用も約1割に見られます。
検査を受けて薬が出されると、1万円近い医療費が発生しますが、新庄市のように通院・入院ともに中学生までは無料という自治体が多いので、子供では自己負担がないことが普通です。インフルエンザであれば、学校では欠席期間が規定され、さらに欠席日数にカウントされないという不思議な制度もあり、無駄な検査や治療を助長していると言ってもよいでしょう。
一方、インフルエンザワクチンの接種はどうでしょうか。学校での集団接種が行われていた1970年代後半には接種率は60%台でしたが、ある地域の医師会の報告をきっかけにして効果が疑問視され、副作用への懸念も強まり、定期接種が任意接種に変更され、1992年には20%を切るところまで減少しました。現在では、子供や高齢者で50%程度、一般成人は30%程度のようです。1回の摂取に要する費用は3,000〜4,000円、補助制度は自治体により異なりますが、医療機関にかかる手間があるためか接種率は上昇しません。
ワクチンの効果は確実ではありませんが、社会防衛上は最も期待できる方法です。ワクチンを受けたくない人の権利は認めた上で、学校での集団接種こそ無料で行うべきです。数年続けてみて、学級閉鎖の割合やインフルエンザに関連した死亡数を比較することは可能なはずです。その上で、効果がなければやめればよいのです。小児の医療費無料化は、コンビニ受診を助長している面もあるのです。すべてを手に入れられる時代でなくなった今、大事なことは優先順位を考えることです。
院長 笹壁弘嗣
新庄朝日第831号 平成30年2月15日(木) 掲載
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