今年は天皇の即位に伴い、通常の国民の祝日が16日から19日に増えます。4月末から5月初めには前例のない10連休が設定されました。楽しみにしている人もいるでしょうが、私は全く逆の気持ちです。当院は、もとのカレンダー通り4月30日から5月2日は通常通りの業務を予定しました。外来が休診でも入院患者にはいつもどおりの治療やケアが必要なので、病院には完全休業はありません。今回のような長期間の休みがあると、職員のやりくりは大変です。
ある調査では、今回の10連休を歓迎しているのは、@学生、A公務員、B会社員で、逆に歓迎しないのは、@アルバイトや非正規職員、A専門職、B主婦という結果でした。歓迎するのは確実に休める人です。非正規労働者は10日間も仕事がないと収入が激減してしまいます。主婦は、夫や子供たちがずっと家にいるとたまったものではないのでしょう。医療などの専門職は、休日でも仕事がなくなるわけではありません。家庭のある職員は、その間子供の面倒を見ないといけなくなるので、仕事ができないこともあります。休みが多いと手術や検査の件数は減るので、病院経営者は頭をかかえます。
国民の祝日は、我が国は年間16日ですが、これは国際的に見てもかなり多い方で、主要先進7か国(G7)の中でも堂々の1位です(米;10、加;13、英;8、仏;11、伊;13)。一方で、有給休暇の取得率は低く、実際の休暇日数(祝日+有給休暇消化数)はフランスよりも10日以上少なく、その他の国と比べても低水準です。個人では決められないかわりに、お上から恵んでもらっているという感じです。古代ギリシアの時代から労働は奴隷がするものであった国と、額に汗して働くことは美徳であるという我が国の古くからの文化の違いとも言えるかもしれません。皆が一斉に休むので、仕事以上の疲れを覚悟して行楽地へ突撃しなければならず、道路はのろのろ、鉄道はぎゅうぎゅう、挙げ句にホテルはとれないことになります。働きたい人は働き、休みを取りたい人は自分の都合で取れるようにするのが、働き方改革ではないでしょうか。
そもそもこんなに多くの国民の祝日は必要なのでしょうか。それ以外にも、大晦日や正月三が日、盆休みなどは多くの人が一斉に休みます。祝日はいろいろあってもいいと思いますが、それを必ずしも休日にする必要はあるのでしょうか。海の日や山の日を休日にする意味は全く理解不能です。昭和48年から始まった振替休日制にも私は反対です。祝日が日曜日と重なった場合は、運が悪かったと思うことのほうが健全だと思います。休日が連続するようにとの思惑で始まったハッピーマンデーも、私にはアンハッピーマンデーでしかありません。このような政策は、経済効果だけを考えたものとしか思えません。前回の東京オリンピックの開会式が10月10日であったためにその日が体育の日になりましたが、今はハッピーマンデーでまちまちになり、来年からはスポーツの日に名称も変わるようです。国に休みを決めてもらわなくても、個人が思い思いに休みを取れるようにすべきです。国民の祝日は静かに祝えばよいのです。ろくに休みもとっていない仕事中毒の私が、このようなことを言うのは、天に向かって唾を吐くということになるのでしょうが・・・
院長 笹壁弘嗣
平成31年4月26日(金)
・過去に新庄朝日等に掲載されたコラムがご覧いただけます。